貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》あの雲は太陽を隠してるだけ。
「どーした?ちゃんと抜け出して来たん…」
「バカ!バカバカバカっっっ!!」
…あまりの語彙の無さに我ながらビックリした。
わたし以上に、アキの目がまんまるになってたけど。
「何なの、もう!!不意打ち!?…ありえない」
わたしはまだアキに背を向けたまま、独り言の様な愚痴を吐く。
「アキに会いたくて会いたくて、ここまでずっと走って来た気持ち…、分かる!?」
言葉が、止まらない。
「退屈そうに待ってるんだろうな、とか、もしもわたしが今日中に来られなかったらどうするんだろう、とか、いろんなこと想定してたのに、居ないなんてヒドいよ…!!」
アキの気配が近付いた。
「…コレ」
後ろから紙袋を差し出すアキ。
「何よ」
「服…、買えないって云ってたじゃん。だから急いで、あんたが着られそうなのを選んで来た」
「え…?」
「メール届いてたの、服選びに熱中しすぎて、気付かなかった…」
わたしは紙袋を受け取り、中を見てみる。
好きなデザイン、好きな色。
サイズまでピッタリ。
わたしの好みを分かった人じゃなきゃ買えない服が入ってた。
「…わたしの為に?」
「うん。頭の中で試着を繰り返した」
ゆっくり振り返ったわたしに、アキが「ごめんね」と云った。
「あ…、謝らないで!」
「なんで?」
「なんでだろう。なんでアキに当たったんだろうね?」
アキが少し笑った。
「わたしこそごめんね」
意地を張らずにちゃんと云えた。
…だけど、
こんなアキの気配りは、これからの生活の中で徐々にわたしに重くのしかかることになる。
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