《MUMEI》

新人で身分の卑しい私が屋敷の乳母に選ばれ風当たりは強くなり、私も精神的におかしくなりそうだった。

旦那様達は庇って下さったが裏では虐めは当然の如く起こり、仕舞いには、下男と共謀して私を乱暴する始末である。


「……風邪、ひきますわよ」

乱暴され、気力の失った私の乱れた着衣を正してくださったのが、奥様だった。

私の仕えている旦那様達には酷く刺々しい印象であったが、私にはまるで聖母のような美しさと慈愛に満ちた笑顔を向けてくださった。
侍従の派閥をご主人様に言って解雇させてくださったのも、私を庇ってくださったのも奥様だった。
それから、私は奥様に尽くそうと誓った。


奥様を愛してた、それがご主人様を裏切る行為だったとしても私には止められなかった。

私は言いなり、奥様に利用されていたとしても後戻りは出来ない、
それは私のご主人様が奥様達の援助を断ってから決まっていたことだ。




坊ちゃまは私を母のように慕ってくださる。
私の自戒は坊ちゃまの無垢な瞳で一層深まる。
あの、幼さに裁かれたいと思った。


レイチェル、と奥様意外で唯一私を呼ぶあの幼い主人に全てを吐露して、彼の両親を殺した私の罪を償いたい。

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