《MUMEI》

「ごめーん…忘れてた。」

「あー?あんたふざけんじゃないわよ。ちゃーんとメールしなさいって言ったでしょ。」

優子が私の胸倉を掴む。
半分冗談にしても怖すぎる。いや、本気なのか?

私が必死で謝っていた時、優子は成田の存在に気づいたのか、私の胸倉から手を離した。

成田は腹を抱えて笑っていた。

「ちょっと…笑うなんて失礼極まりない。…てか成田なんでそんなに私らと距離あるわけ?」

そう言って、私のことを放り投げると、優子は成田に近づいていく。
成田は軽く悲鳴を上げると、逃げようとした。だが、優子はそれを逃がさない。

優子が成田の肩に触れた。

「優子、やめなよっ。」

私の口から思いがけない言葉がとび出した。しかも大きな声で。周りから非難の目が浴びせられる。

優子が振り返る。
成田は驚いて私を見ていた。

「いやっ、ほら…成田かばうのは嫌だけど、同じ異性嫌い仲間としてほっとけなくて…。」

私は焦っていた。
いつもは別に優子のやりたいようにさせていたのに、なぜかそれを許せない自分がいた。

「お前、すばらしい。」

成田は嬉しそうに、拍手する。
一方優子は怒っていた。そこまで怒るのか…そりゃ私が連絡しなかったのが悪いけど…。

「つーわけで、俺待たせてるんだわ。」

成田はそう宣言すると、風のように消えていった。
この…逃げ足の速い奴め…

私は成田の逃げていった方向を唖然として眺めると、優子のほうをそっと見た。
すると優子は私に抱きついてきた。


え…?優子がハグ…?


「ゆ、優子?」

私は驚く。わけが分からなかった。

「良かったー…おめでとうっ。」

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