《MUMEI》 ヘンな気持ち義仲はため息をついて、はじめてわたしの方へ目をやった。 「大丈夫?」 穏やかな声だった。彼はゆっくり近づいてくる。 わたしは義仲から目を逸らし、平気…と小さな声で答えたものの、頭の中はぐちゃぐちゃだった。 …………ヤバイ。 コイツ、普通じゃないッ!! はだけた胸元を隠す手が、震えた。 それに気づいたのか、義仲は急に腰に巻いていたシャツをわたしの肩にフワリとかける。 わたしはゆっくり顔をあげた。 きれいな彼の顔が、すぐそばにある。 思わず見とれているわたしに……義仲は呟いた。 「そのカッコじゃ、帰れないでしょ?」 そして、わたしの足を見る。わたしも視線を追った。 くじいてしまった足が、赤く腫れ上がっていた。 義仲は表情を変えず、つづける。 「……歩ける?」 わたしは足を動かそうとしたが、激痛が走り、すぐにあきらめた。義仲の顔を見て、ムリ、と答える。 . 前へ |次へ |
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