《MUMEI》 彼は乱暴に頭をかき、しかたねーなぁ…と呟いた。 「ゆうこママのとこ、行ってみるか……」 ボソッと呟いた言葉がうまく聞き取れず、わたしは眉をひそめる。 「なに?」 義仲はなにも答えずに、しゃがんだままわたしに背中をむけた。肩越しに振り返り、乗って、と言う。 「近くに知り合いがいるから、そこでその足、どーにかしよ」 わたしは瞬いた。 そして、のろのろと彼の背中にしがみつく。義仲のくせに、優しい温もりを感じた。 義仲はよっこいしょ、とオヤジ臭い掛け声をかけ、わたしをおんぶしてフラフラと立ち上がった。 そして、ゆっくり歩きだす。 義仲の首筋が、目の前にある。 なんだか照れくさくて、顔を背けた。 −−−そして、考える。 ………なぜ、義仲は助けてくれたのだろう。 . 前へ |次へ |
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