《MUMEI》

彼は乱暴に頭をかき、しかたねーなぁ…と呟いた。


「ゆうこママのとこ、行ってみるか……」


ボソッと呟いた言葉がうまく聞き取れず、わたしは眉をひそめる。


「なに?」


義仲はなにも答えずに、しゃがんだままわたしに背中をむけた。肩越しに振り返り、乗って、と言う。


「近くに知り合いがいるから、そこでその足、どーにかしよ」


わたしは瞬いた。


そして、のろのろと彼の背中にしがみつく。義仲のくせに、優しい温もりを感じた。


義仲はよっこいしょ、とオヤジ臭い掛け声をかけ、わたしをおんぶしてフラフラと立ち上がった。

そして、ゆっくり歩きだす。


義仲の首筋が、目の前にある。


なんだか照れくさくて、顔を背けた。



−−−そして、考える。




………なぜ、義仲は助けてくれたのだろう。




.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫