《MUMEI》

翌日。


月曜日。


一睡もできなかった。


涙はなんとか止まった。


それなのに、


やるせないこの感情はなんなんだろ?


「…ありがとうございました。」


小さな声でヤマのお母さんにお礼を言った。


「…気を付けてね。」


ヤマのお母さんはそう言って見送ってくれた。


一言も喋ろうとしない理紗ちゃんを車に乗せ、


ヤマの家を後にした。


「…」


「…」


車内では会話がなかった。


今理紗ちゃんを元気づける言葉が、


この世に存在するのなら、


是非教えてほしい。


「…とりあえず、
ゆっくり休んで。」


「…はい。
ありがとうございました…。」


泣くのを我慢していたのは、


すぐにわかった。


だってここは、


翔太と理紗ちゃんが暮らしていたアパート。


無理もない…。


何で僕はこの子をここに連れて来たんだろう?


情けなくなる…。


自分のデリカシーの無さに。


余裕がなかったなんて…


言い訳にもならないよ…。

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