《MUMEI》
いつかのお返し
俺はその瞬間、隙ができていたと思う。


「…っ…ゲホッ…」


叫んだ直後に俺を襲ったのは、腹部に走る激痛。


「顔はヤバいし、…保健室での仕返しだよ」


(いつの話だ。意外と執念深いな…)


俺は、俺に痛みを与えた張本人を


目の前にいる祐を睨みつけた。


「祐也が悪い」


祐は、握り締めていた拳を開きながら、言った。


「俺の前で、祐希を『そんなの』と、『どうでもいい』と言った、祐也が悪い」


その眼差しは、冷えきっていた。


「俺にとっては祐也がこだわる名前の相手は、どうでもいい存在だ」

「なっ…」

「だから、『そんなのどうでもいい』から、今後口にしない」

「この…っ!」


冷静な祐とは反対に、俺は熱くなっていた。


そんな状態の俺の拳が祐に当たるわけはなく


空を切るばかりの拳に、俺は更に焦り、苛立った。


「もう、よせ、祐也」


拳を正面から受け止め、祐は哀れむように俺を見つめた。


「お前の過去にもう俺は触れない」

「信用、…できるか」

「俺は、過去より未来を選ぶ。…普通はそうだろ?

いつまで過去に囚われてるんだ?」

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