《MUMEI》
祐の意外な言葉
(…いつまで?)


「いつまでもだ、俺は忘れない」


忘れてはいけない。


旦那様と過ごした日々を。


与えられた幸せを。


…犯した、罪を。


「俺は、忘れない」

「忘れないのは、いけない事じゃない」


祐は、受け止めていた俺の拳を優しく包んだ。


「…何が言いたいんだ?」

「忘れないのは、悪くない。忘れられない過去は誰にでもあるから。

俺だって、雅樹の前に付き合った連中を忘れるつもりはないよ。

…あんまり昔のは忘れたけど」


それは、俺には安藤先輩と付き合っていた事を忘れないと言っているように聞こえた。


「誰かを傷付けて、傷付いて、今があるから、過去は忘れなくていい。

ただ、過去ばかり見ていて、今や未来を考えていない祐也が

俺にはひどく危うい存在に見える。

皆は祐也は優秀で、頼りがいがあるっていうけど…

俺は、ほら。

禁句ばかり言って、知らずにお前を追い詰めたり、いろいろ、したから…

まぁ、その、つまり…

心配なんだよ」

「お前が、俺をか?」

「悪いかよ。…優秀な将来の部下を心配するのは当たり前だろ?」

(部下、ねぇ…)

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