《MUMEI》

義仲は明るく笑う。


「バカな不良に絡まれて、服ボロボロにされちゃってさ。足も怪我してんだ」


オカマはわたしの腫れ上がった足を見て、驚いた。


「大変!早く冷やした方がいいわネ」


義仲は頷く。


「お店で手当てしてもらっていいかな?」


意外にもオカマはニッコリして、もちろんよ、と快く答えた。颯爽と身を翻し、目の前のお店のドアを大きく開いた。

わたしは店先に出された看板に目をやる。

看板には《スナック ゆうこ》と書かれていた。

オカマはわたしたちを促す。


「早くいらっしゃい。まだ、開店まえだから、ゆっくりしていくといいわ」


義仲は、サンキュー!と笑い、わたしを背負い直すと、オカマのあとについて店に入った。


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