《MUMEI》
祐の将来
「もう、離せ」

「もう殴らない?」

「今日はな」

「それは怖いな」


そう言いながら、祐は笑顔で俺を離した。


祐の意外な言葉を聞いているうちに、俺はいつの間にか落ち着いていた。


「さ、寝るか」

「祐」

「…何? お願いはちゃんと守るよ?」


祐は俺に背を向け、横になった。


「お前は、どんな社長になりたい?」

「…何急に」


祐はすぐに振り返り、不思議そうに俺を見た。


「何となく」


何となく、祐がどんな社長になるか


祐の未来を訊いてみたかった。


「そうだなあ…

まず、優秀な人間を集めるのはばあちゃんと変わらないな」

「肩書きにこだわらないところも?」

「ところも」

「そうか」


それは、旦那様と同じだ。


「嬉しそうだな?」

「…他には?」

「他は、それとは別にプライベートでは身内と恋人を大事にする。まぁ、雅樹は恋人というか、夫みたいなもんだけど」

「そうか」


そこは、旦那様と違う。


(でも…)


「嬉しそうだな?」

「そうか?」

「あぁ」

「そうか」


俺は、どうやら嬉しい、らしい。

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