《MUMEI》

わたしが、ありがとうございます、とお礼をのべると、ゆうこママはニッコリした。


「いいのよ、困ったトキはお互いさま!」


その台詞に、こんどは目頭が熱くなる。

そのとき、カウンターのスツールにこちらを向いて腰掛けていた義仲が呟いた。


「ゆうこママ、いつも悪いね」


ゆうこママはゆっくり振り返り、義仲を軽く睨んだ


「女のコに怪我させるなんて、彼氏失格よ!」


「いや、彼氏じゃないんですけど……」


否定したわたしを、ゆうこママはあっさり無視する。


「惚れたオンナのためなら、命を懸けても守り通すのがオトコってものでしょ!昔から、そう決まってるのよ!」




………いやいやいや。

わたしたち、ただの高校生ですし。

ふつーに命懸けたりとか、できませんし。

第一、付き合ってなんかないし。

つーか、その話、どこの世界の決まりですか?

生まれて初めて聞きましたよ、ハイ。




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