《MUMEI》
一 桜と紫苑
 御簾の内には、双子の姫君と若君。 一昨日、十三になったばかりだ。




「‥‥‥紫苑」




 不意に、姫君が傍らの若君に問い掛けた。




 名を呼ばれた若君は、読んでいた草子から目を離し姫君の方を向く。




「何? 桜──」




 問い返された姫君は暫し考え、それとなくこう呟いた。





「疲れるな‥」




「‥疲れる‥?」




 きょとんとする、若君。




 姫君は、長々と重い溜め息をつき、




「いつまで私達は、面を被っていなければならんのだろうな、紫苑‥」




そう、呟いた。

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