《MUMEI》 そんな中で不満が募るのは仕方のない事ではあるのだが、やはりそればかりに囚われてはいられない。 とは言っても、何か気分を晴らす術がある訳でもない。 さて、どうしたものか。 先にひらめいたのは桜だった。 「入れ替わる、というのはどうだ?」 「入れ替わる‥?」 「暫しの間、私がお前になり、お前が私になるのだ」 「どうやって‥?」 「術を使うのだ」 「術‥!?」 「うむ、この書物にな──」 何食わぬ顔で説明を始める桜の手元にある書物を見るなり、紫苑が血相を変えた。 「桜、それ‥どこから──」 「ぁぁ──陰陽寮から拝借して来た」 「だ‥駄目だよそんな事しちゃ‥!」 前へ |次へ |
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