《MUMEI》
疲れ
 バリバリとカンパンを噛み砕く音が倉庫内に響く。
「けっこうカンパンもイケるな」
「だね。あっちに水もあったよ。はい」
ユキナは水の入ったペットボトルをユウゴへ渡した。
「缶詰もあるしな。……缶切りないけど」
「意味ないじゃん。けどさ、みんなここ知らないのかな?」
「さあ。知ってんじゃん?ただ、そこまで頭が回らないだけで」
ユウゴは水を一気に飲み干した。

「さて、と。腹も一杯になったことだし」
ユウゴは言いながら立ち上がる。

今日はどうするべきだろう。
 三日目ともなれば、鬼も子も生き残っている者は僅かだろう。

下手に歩き回ると危険かもしれない。

幸い、ここには誰もいないようだ。
しばらくここに身を潜めるか。

「……なったことだし?どうするのよ?」
「え?ああ。そうだな。しばらく、ここに隠れるか」
ユウゴが答えると、ユキナは意外そうに目をわずかに開いた。
「なんだよ?」
「いや、意外だなと思って。今日もどこか歩き回るのかと思った」
「腕の怪我も痛いし、少しは体を休めた方がいいだろ」
「つまり、自分が疲れたから休みたい、と」
「そういうこと」
ユウゴは頷きながら、入口の近くに移動した。

 休むといっても、神経は尖らせておかなければならない。

今、この町では何が起こるかわからないのだから。

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