《MUMEI》

「──サクヤ、着いたぞ」

「‥ぇ‥」




 また‥寝てしまっていたみたいだった。




「ごめん──」

「気にしない気にしない♪ 菜畑も寝てたんだし。ねっ?」

「起きていたのは君だけ、か」

「ふふっ、凄いっしょ♪」

「少々‥調子に乗り過ぎていないか‥?」

「ほらっ、早く降りよ?」

「ぁぁ‥‥‥。ほら、サクヤ」

「ぁ‥‥‥あり、がとう‥」




 あの時と同じだ。





『──ほら』




  何だか、嬉しくなる。




 思わず、その手を握り返していた。

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