《MUMEI》

「うん。ぁ‥アゲハ君まだこの町の事よく知らないよね。私──案内して──」

「いや、大丈夫だ」

「ぇ?」

「大体の所は把握している──だからその必要は無い」

「───────」

「いい場所を見付けた──君もきっと気に入る」

「じゃあ──楽しみにしてるね」

「ぁぁ。さて──戻ろうか。急に連れ出して済まなかったな」

「ううん、嬉しかった」

「そう、か‥?」

「うん。──ありがとう」

「‥止せ、くすぐったくなる」




 アゲハ君はそう言って、扉に向かって行く。




 ぼんやりしていた私は、予鈴が鳴ってからやっと走り出した。

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