《MUMEI》

「よし──これで私達が入れ替わった事は誰にも分からん筈だ」




 桜が自分の声で喋っているので、紫苑は不思議な気持ちがしていた。




 尤も、入れ替わっているのだから当たり前の事‥ではあるのだが。




「ねぇ?」




「何だ‥?」




「こうやって入れ替わってみるとさ、何かいつもの景色が違って見えるよね」




 紫苑が言うと、桜は徐に頷く。




「確かに──そうだな」




 何か、違う世界を見ているようだ、と──彼女はそう思った。




「さて」




 桜は、膝を叩いて立ち上がる。




「では、遊戯の始まりだ」

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