《MUMEI》 二 卯月の頃──卯月。庭園には、淡く色付いた花が咲いている。 紫苑として何不自由なく振る舞っている桜は、独り蹴毬に興じていた。 「腕を上げられましたな」 「ん‥、白栩(はくう)‥か」 桜が振り向くと、そこには紫苑付きの薬師がいて、目を細めて自分を見ていた。 「ご一緒させて頂いても宜しいですかな?」 「ぁぁ、構わん。丁度──独りでは詰まらんと思っていた所だ」 桜が答えると、白栩は彼女の前に来て、蹴り上げられた毬を器用に受け止めた。 「ところで──白栩は何をしに来たのだ?」 桜が言うと、白栩はきょとんとした。 「お忘れですかな‥?」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |