《MUMEI》

「何をだ‥?」




 桜は、紫苑から白栩が自分の薬師である、という事は聞いていたのだが、詳しい事は知らない。




 白栩も、今目の前にいるのが桜であるとは気付いていない。




「すまん──色々と‥忙しくてな」




 いえいえ、と白栩はにこやかに言う。




「本日は、お薬をお届けに上がったのでございます」




「薬‥?」




「左様でございます」




「待て、私は──」




 言いかけて、口を噤む。




 今、自分は紫苑なのだ。拒んでは、怪しまれてしまう。




「ご苦労だった、白栩。蓮宮(はすのみや)に渡しておいてもらえるか」




「承知致しました」

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