《MUMEI》 「はぁ‥」 危ない所だった、と桜は思う。 二人は、容姿は瓜二つであっても、体調や習慣は違うのだ。 ‥そして。 (参ったな‥) 桜は今、困惑している。本来なら紫苑が飲むべき薬を、自分が飲まなければならないのだから。 「蓮宮、今日はいつもより体調が良いのだが‥」 「左様でございますか? ですが、またお具合がお悪くなるやも──」 「‥ぁぁ、そうだな」 これは、紫苑の体なのだ。自分の身勝手で、彼に負担を掛ける訳にはいかない。 「‥‥‥‥‥‥‥」 意を決して、薬を含む。 (‥苦い‥) 何とか飲み下し、 「──ふぅ‥」 桜は、再び息をついた。 前へ |次へ |
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