《MUMEI》

「‥‥‥ぇ」




 問い掛けに答える事も出来ず、固まる紫苑。 菊宮は小首を傾げた。




 ‥が、すぐに‥ふうわりと笑った。




「お櫛を致しましょうか」




 ぇ‥、と小さく問い返すと、菊宮は紫苑の後ろに回り──艶やかな黒髪を、櫛で梳き始めた。




「───────」




 本当に、女子になったような気分に、紫苑は浸っていた。




 梳かれてみて初めて、この髪が長い事を知る。




 差し出された鏡に己を映してみれば、そこには女子の顔がある。




 それを見つめる内、




(桜は今頃どうしてるかな‥)




と、ふと思った。

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