《MUMEI》

 あの薬を飲んでから、桜は妙に眠気を感じていた。




 腰掛けたまま、うつらうつらとまどろみ始め‥すっかり瞼を閉じてしまっていた。




 蓮宮がそれに気付いて、その体を寝床に横たえてやる。




(お疲れになられたのですね──)




 穏やかな寝顔を見つめて、蓮宮はそう思った。




 ‥と。




 ひょっこりと、何者かが顔を覗かせた。 だがすぐに引っ込むと、ぱたぱたと駆けて行ってしまった。




(今のは‥)




 蓮宮は廊下へ出て見回したが、もうその者の姿はなかった。

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