《MUMEI》

「そっか──」

「本当は、他の場所も捜す予定でいたんだけれど──」

「ここだけで十分だよ」

「そうか‥?」

「うん。すっごくここ気に入っちゃった私──」

「──何よりだな」




 菜畑君──嬉しそう。




「──向こうも回ってみるか」

「うん──」




 また、歩き出す。 ゆっくりと──一歩ずつ。




 手を繋いで、他愛もない話に花を咲かせて。




 歩いて行く。 焦らずに。




 そよ風に身を任せて、歩いて行く。

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