《MUMEI》 第四章 幸福「怜ー、成績どうだった?」 憂鬱だったテストも無事に終わり、明日から夏休みという素晴らしい期間が幕を開ける。 「…ヤバイ、最悪…。」 「だーよねー…。」 優子と私は、一緒に深いため息をつく。 「あ…そーいえばさ、最近成田と会ってんの?」 優子は思い出したかのように言った。 「いや…会ってない。」 「はー?会いなさいよ。今までみたいにどーでもいい話でもいいからしてきなって。」 「どーでもいい話って…。」 「じゃないと、成田との交流なんてなかなかできないでしょーが。」 優子は私の髪の毛をひっぱる。 「…ったー、ひどくない?」 「ほら、とにかくメールしてさー。」 「駄目だよ。」 私はうつむく。 「男嫌いってのは分かるけど…成田のこと好きなんだったら、せめて友達とでも思ってもらえるように行動しなきゃだめでしょ。」 そんなこと…言われなくたって分かってる。 あの今までの愚痴の言い合いがなかったら、私は成田と何度も会うことはなかった。 あれが成田と私をつなぐ唯一の手段。 だけど… 「だって…絶対に話途切れそうだし…その…緊張して…。」 「だーいじょうぶだってー…。」 私は、成田と二人で話している様子を想像する。 「…でも、無理。やっぱりハードル高すぎる。」 優子に対してお願いという意味を込めて、私は合掌する。 優子は眉をひそめる。 「しかたないなー…。」 優子がそう言った時、クラス中にその声を遮るような声が聞こえた。 「えー…みんな注目ー。」 真央が教卓のところに立っていた。 「みなさん、お忘れかと思いますが…シンデレラの台本今から配るんで、夏休み中に読んでイメージしてくるなり、買出し行くなりしてください。」 私は固まった… シンデレラなんて…すっかり忘れてましたーーーー。 前へ |次へ |
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