《MUMEI》
謎だらけの一人旅
(ここ…、だよな?)


四月一日。


祐に渡されたメモを頼りに、俺は旅に出た。


電車をいくつか乗り継ぎ、最終的に辿り着いたのは小さな無人駅だった。


(何にも… … あれ、誰だ?)


切符を専用の木箱に入れ、小さな駅舎から出た俺の目に


田舎に不釣り合いな白いオープンカーが飛び込んできた。


しかも、運転席にいたサングラスをかけた男は、こちらに向かって手を振っている。


(俺しか、いないよな?)


この駅に降りた乗客は、俺一人。


(でも、あんな男知らないし)


男性は、忍とは明らかに体格が違っていた。


(ていうか、何で忍が来てないんだよ)


俺は忍に言われて、志貴や貴子さんにコーディネートされた服を着て、祐のメモを頼りにここまで来たのに。


すると


「おーい、田中さん! 田中『祐子(ゆうこ)』さん!」


運転席から立ち上がり、男が『俺の名前』を呼んだ。


…俺は今日、女装していたのだ。


しかも、『人見知りの激しい女の子』として、祐子という名前まで与えられていた。


俺は無言で男に近付いた。


「俺は、雅(みやび)。忍に言われて迎えに来たよ。さぁ、乗って」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫