《MUMEI》

「ご苦労様、妖月」




 紫苑は差し出された札を手に取り、眺める。




「どこに貼ればいい?」




「私がやるのだっ」




 妖月は再び札を手にし、ぴょんっ、と飛び上がると──鬼門に位置した壁の上部に貼り付けた。




「これで安心なのだっ」




 妖月は笑って言い、紫苑が読んでいた草子を覗き込む。




「ふむ──桜の姫は難しい書もお手の物なのだな──」




「ぇ、そう‥かな」




「うむっ、そうなのだっ」




 妖月もまた、今話し掛けている相手が紫苑であるとは、まだ気付いていない。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫