《MUMEI》 「むぅぅ‥強いのだ紫苑の君‥」 結局、妖月が二人の秘密に気付く事はなく──彼女は桜と蹴毬をしていた。 だが‥尽く負けている。 「──妖月」 「?」 「干し桃──食べる?」 「おおっ──頂くのだっ」 すかさず、妖月が紫苑に飛び付く。 紫苑は驚きつつも、干し桃の包みを妖月に差し出す。 「狐叉の分も後で渡すね──」 「うむっ」 頷き、彼女は包みを開けて一つを口に放り込む。 途端に、にっこりと笑った。 彼女はかなりの甘党なのだ。 「ありがとうなのだ桜の姫っ」 妖月が言うと、紫苑ははにかんだ。 そんな彼を、桜が微笑ましげに見つめていた。 前へ |次へ |
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