《MUMEI》 「妖月さんがこれを置いて行かれたようなのですが──」 「妖月が‥?」 それは、匂袋だった。 (‥あ奴‥忘れ物などしおって‥) 「如何──致しましょうか? 私がお届けに──」 「いや」 桜が、勢い良く立ち上がる。 「私が行こう」 「紫苑‥様‥?」 「では、私も──」 「姫様っ‥?」 「散歩を──したいと思っていたんです──」 「左様でございますか──」 葵は不思議に思いつつも、何かを訊く事はしなかった。 前へ |次へ |
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