《MUMEI》

「何故付いて来る‥?」




「だ‥だって‥内裏にいたら何かばれそうで‥」




「恐れる事など‥‥‥‥なくはないが、まぁ‥今の立場を楽しんでおいた方がいいぞ」




「うん‥‥‥でもね‥?」




「何だ‥?」




「ううん──何でもない。ね、妖月にこれ届けたら──ちょっと市に寄って行かない?」



「市‥?」




「うん。たまにちょっと色々見てみるのも楽しいかなって」




「あまり遅くならなければ、な──」




 そう答え、桜は少し歩調を早めた。 紫苑は小走りになりながら、遅れを取るまいと彼女を追い掛ける。

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