《MUMEI》

「あはは‥なのだ」




「──────‥」




 呆れて叱る気にもなれない狐叉。




「申し訳ない‥」




 桜と紫苑に、深々と頭を下げる。




「ぃゃ、気にするな。丁度良かった──たまの遠出も楽しいものだから」




「では、私達はこれで──」




「──あの」




「?」




「ぃぇ──‥お送り致そうかと」




「大丈夫だ。では──これで」




 桜が踵を返すと、紫苑も続く。




 狐叉は二人を見送りつつ──月色の眼を僅かに濁らせた。

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