《MUMEI》 翌日。 火曜日の早朝。 「じゃあ… 行って来るね。」 「うん。 気を付けて。」 珍しく正装をしていた。 喪服は持ってなかったから、 スーツ。 「小太郎。」 「ん?」 珍しく早起きをした僕は、 父さんよりも早く支度が済んでいた。 「…ちゃんとお別れしてこい。」 ネクタイを絞めながら父さんがそう言った。 「…うん。」 父さんは仕事が忙しい人だから、 最近はずっとまともに話せてない。 忙しいのは僕も一緒だし。 怒ると怖い人だけど、 なんだかその一言は嬉しかった。 僕は車に乗り込み、 理沙ちゃんとの待ち合わせ場所に向かった。 理沙ちゃんは自分の車を持ってたけど、 翔太の実家の場所は知らなかったから、 僕の車の後ろに付いてくることに。 翔太の実家、 と言っても翔太の両親は離婚して別々に暮らしてる。 葬式は翔太のお父さんの家でやる。 僕も翔太の実家に行ったことがあったわけじゃないけど、 その近辺には詳しいし、 だいたいの場所は知ってたから。 ザー!! 一昨日から雨は一向に止む気配を見せない。 そんな訳ないのに、 つい思ってしまった。 『泣いてるの?』 って。 前へ |次へ |
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