《MUMEI》
忍と雅
「お待たせ、忍」

「悪いな、雅」

「いいよ。久しぶりに若い子と接したし」

「…オッサン発言だな」

「結婚して子供できたら皆オッサンだよ」

「そうか」

「そうだよ」


(し、忍が穏やかに笑ってる…! しかも、言葉にトゲが無い!)


初めて見る忍に、俺は呆然としていた。


「どうした? 祐子。おいで」


(そしてこれは絶対演技だ!)


俺は、スカート姿なのも忘れて、大股で歩きながら忍の隣に行った。


「…可愛い彼女がいて、安心したよ。忍」

「お前、気付いてるだろ?」

「いや? ここでは、俺はただの先輩。で、お前は可愛い彼女がいる後輩。

それだけ、だろ?」

「あぁ、それだけだ。相変わらず、お前は何も訊かずに悟るな」

「そりゃ、経験豊富な先輩ですから」


(俺の存在忘れるな)


声を出せない俺は、忍のシャツを引っ張って、存在をアピールした。


「ごめんね、祐子ちゃん。あのね、ここは俺の隠れ家で、数年前から、忍にもたまに貸してるんだ。

ゆっくりしてね。

邪魔者は退散するから」


俺の頭を撫で、雅はすぐに帰っていった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫