《MUMEI》 「分かった。」 俯き、視界一杯に広がった芝生に、視線を落とす。 「……俺は皆とはちゃう。 その証拠にメディアに注目されとる。」 ここで一つため息をつき、ゆっくりと周囲を見渡した。 「けどな、俺はそんなんどうでもえぇねん。 俺は皆とただひたすらに……一緒にサッカーしたかっただけなんや。」 「賢史……。」 一希がなんとも言い難い複雑な表情をして、俺の顔を覗き込んだ。 「甘かったんやな、俺。 結局俺は……。」 皆から誰一人として、自分自身を見てもらえて無かったんだ。 「もう……いい……解散。」 サークルになって並んだメンバーが、四方八方歩み去って行った。 その中の何人かが声をかけてきたのだが、全て無視した。 残ったのは一希と俺。 コート外の片隅で、二人縮こまるように座っていた。 しばらくの沈黙が続き、重苦しい空気が漂う。 耐え切れなくなった一希は、唐突に口を開いた。 「自分責めんなよ。」 慰めるかのようにして、俺の右肩に手を添えた。 前へ |次へ |
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