《MUMEI》

「書を‥お貸し頂けるか」




「‥ぁぁ‥」




 桜は頷き、書を文机から持ち上げる。




「‥‥‥‥‥‥‥」




 無言で、須泱に差し出す。




 須泱は書を受け取り、ぱらぱらと捲る。




「‥‥‥やはり、か‥」




「やはり‥?」




「──‥使われたのだな、この術を‥」




「‥まずかったのか‥?」




「禁書に書かれてあるものなんだもん‥」




 紫苑が、呟いた。




「須泱‥‥‥ごめんなさい」




「──使ってしまわれたものは致し方無い‥」

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