《MUMEI》
エイプリルフールの夜
結局忍にいいようにあしらわれた俺だけが、汗だくになった為、夕食前に風呂に入った。


「祐也様の好きなくまさんを描いて差し上げるから、機嫌を治せ」

「いつの話だ。…口調おかしいぞ」

「とっとと食え」


(そっちで統一かよ)


そんな忍が作ったオムライスは


それでもやっぱり美味しかった。


「風呂入ってくる」

「あぁ」


忍を見送り、俺は大きな窓を開放し、満天の星空を見ていた。


「無防備だな」

「し、…のぶ!?」


夢中になって見ていたから、俺はいつの間にか後ろにいた忍に気付かなかった。


「何してる」

「愛するお前を抱きしめている。

来年は、もうお前に会えないから」

「冗談、…だろ?」


忍は無言で更に俺をきつく抱きしめた。


「きっと初めてお前の笑顔を見た時から、俺はお前が好きだった。

だから、俺は一度だけ、旦那様のフリをしてお前を抱いた」

「嘘、だろ?」


忍に抱かれた記憶は俺には無かった。


「生きていて欲しかったから、抱いた」

「しの…っ…!」


混乱する俺の意識は


不自然に、途中で途切れた。

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