《MUMEI》
そのオンナ、破天荒
.









−−−−冗談じゃない。











わたしは、


あいつらのオモチャじゃない…。







わたしは、



−−−わたしは…………………。













◇◇◇◇◇◇







−−−ユーレイかと、おもった。







午前2時−−−−。

霧がたちこめる、山の中……。



急ブレーキをかけた俺は、

ハンドルを握りしめて、しばらく呆然としていた。





トラックの、フロントガラスの向こう側。





挑みかかるような目つきで
車内にいる俺を
真っ向から睨みつけている、






その、『オンナ』が


突然、トラックの正面に、飛び出してきたときは……………。
















「ちょっと、アンタ!!」



オンナの声で、俺はハッと我に返る。



………って、声!?
空耳??空耳か!?
そうだ、そうに決まってる!!




でも。




オンナが、
飛び出してきた、気がしたけど………。




夢、だよな?

夜中だし。山の中だし。

…………じゃなければ、




ユーレイ??




ハンドルを握る手に力をこめながら、俺は真偽を確認するために少しだけ身を乗り出して、もう一度フロントガラスの向こう側を見つめた。



トラックのヘッドライトに照らし出されたのは…………。



…………オンナ、だ。



オンナが、立っている。
しかも、とびきりの美女。



…………変な格好だけどな。



舞台女優みたいな派手な厚化粧に、クルクルに巻いた髪をアップにしている。服も、テレビのアイドルが着ているような、テカテカ光った黒い布の、キャミソールワンピースドレス。




…………まぁ、なにより変なのは、
こんな着飾ってるくせに、なぜか裸足ってトコだけど。



しかし、よく出来たユーレイだな。
こんなにはっきり見えるなんてさ〜。

俺って霊感あったんだな。

マジびっくり。



オンナは野良猫のように挑戦的な目つきをして、ガラス越しに俺を睨みつけていた。



「シカトすんじゃないわよッ!!」



えッ!?あれ!?
喋った??喋ったよな!?

じゃあ、ユーレイじゃない??



つーことは、俺、ひとを轢きそうになったってこと?



…………それって、ヤバくね??




.

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