《MUMEI》 「じゃあライバルらっ!おりぇもアキラしゃんが大好きらけど、おりぇの兄ちゃんのお嫁さんりゃから、おりぇのママになってもらって、ずっとおりぇの側にいてもらうのっ!」 …話の内容がよく分からなかったが、どうやらチビの断片的な話を聞いていくと、この子供はあの克哉という金髪の奴の年の離れた弟という事らしかった。 「そうか…じゃあ、お前のママがアキラだとすると、俺はお前の兄さんではなく叔父さんになるんだぞ」 「おじ…しゃんなの?…オンケル?……エルテル ブルダァにゃのに?」 俺の話を聞くと、チビが何と言っていいか分からずに混乱してモジモジしはじめた。 「…言うのが難しければ、巽だ、あきらの兄のた・つ・み」 「たつみ兄ちゃーん///」 「…それでいい」 足下でモジモジしていたチビを抱えて高い高いをしてやると、チビは嬉しそうにキャッキャととはしゃいでいた。 「兄さん…」 ふと、声のした方を振り返るとそこには母親のような雰囲気になったアキラが立っていた。 「いいのか…アイツだけ残して…」 「克哉さんは大丈夫です、ちゃんと説明してくれてますよ」 「アイツ…日本語、話せたのか」 「あの人はハーフなんですよ、日本人とドイツ人の」 そうだったのか…眉間が力強くて、全くそんな風には見えなかったな…。 「という事は、お前もなのか?」 抱き上げていた金髪の子供にそう訪ねると、その子供は元気よく「おりぇの前のママがヤーパンで前のパパがドイッチュなんらよぉ」と言ってきた。 「その子が克哉さんの弟だってこと、くるみちゃんが自分で言ったんですか?」 「あぁ、そうだよな」 「うん、にーたんだけどおりぇのパパなんらよぉ〜って♪」 小さな子供はそう言ってはしゃぐと、それを見ていたアキラの顔が、ふと、ほころんでいた。 前へ |次へ |
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