《MUMEI》

「適当に荷物置いとけよ」
「うん、ほんとお世話になっちゃっていいんですか?」
「あぁ…人が居ると落ち着くというか…殺風景な部屋だからな」

笹山さんの家に、親切にも居候という形で置かせてもらえる事になった。

「じゃあバイトとか見つかるまで、お世話になります」
「別にバイト見つかるまでじゃなくても、しばらく居ていいぞ」
「ありがとうございます」

笹山千晶さん。

兄さんが行っていた大学の同級生で、今はどこか知らないけど不動産関連の所で働いているらしい。

背が高くて逞しくて、短い髪をディップで固めてツンツンにしていて、とっても格好いい。

きっと女性にモテるんだろうな…頼りない僕とは大違いだ…。


笹山さんはたまたまウチに来ていた時に知り合いになった。

そこで僕は家を出たいという事を笹山さんに伝えたら、自分は高層マンションの広い部屋で一人暮らしなので、部屋も余っているというのでお世話になる事にしたのだ。


その空いているという部屋に荷物を置かせて貰うと、申し訳程度に持ってきた服とかをクローゼットに整理していった。




「シャワーはそっち、タオルは…ほら」
「ありがとうございます…でも///」

タオルを渡され、言われたシャワールームは部屋から様子が見えるスケスケのガラス張りだった。

「俺は後ろ向いてるからよ」
「は…はい///」

人前で裸になるのは恥ずかしかったけど、笹山さんがソファーに座りテレビを見ていたのを確認し、僕は服を脱いでいった。



「飲み物ってありますか?」
「あ…コレ飲むか?」

そう言って笹山さんは自分の持っていたグラスを差し出してきた。

「うッ…お酒じゃないですか!無理です…うェ…」

むわっとするお酒の匂いに吐きそうになると、笹山さんはその隣に置いていたグラスに水と氷を入れて出してくれた。

「今時、そのくらいの年でも飲むだろ」
「…飲んでる人なんか見た事ありません」

グラスを受け取ると、その中の氷の周りに泡が立っていた。

「何ですか…コレ?」
「炭酸水も知らないのか、全くお坊ちゃんだな…アイツもだけど」

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