《MUMEI》 . 「だれがおまえみたいな、頭のおかしーオンナを乗せるかってーの!?」 ハンッ!とバカにしたように鼻で笑って見せた。 しかし、オンナも食い下がらない。 「なによ!?こんな山の中に、女のコを置き去りにするつもり!?」 …………いやいやいやいや!! 『置き去り』って、アンタ! もともと、山の中にいたじゃないですか!? 俺は呆れ顔でため息をついた。 「あのねぇ、俺、仕事の途中で荷物を−−−」 言いかけた俺の腕を、オンナが急に、ガシッと握りしめる。マジでビビった。 そして至近距離から俺の目を見つめ、叫んだ。 「乗せてってば……ッ!!」 気丈な口調とは裏腹に、 焦燥がうつるきれいな双眸と、 彼女の手は、小刻みに震えていた−−−。 「どこだー!!」 「早く見つけろッ!?」 近寄ってくる無数の足音。 青ざめるオンナ。 震える、か細い指先。 −−−気づいたら俺は、 「…ったく、めんどくせーッ!!」 そのオンナを助手席に押し込めて、 運転席に飛び乗ると、 勢いよくトラックを発進させた…………。 それが、 俺−−−《松永 俊輔》と、 謎のオンナ−−−《稟子》の、 史・上・最・悪!!な、 出会いだった………………。 . 前へ |次へ |
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