《MUMEI》

バシッ!!










ドンッ!!










翔太のお父さんが倒れた。


殴られたんだ。


僕じゃない…


恭介でもない…


それはさっき、


翔太との別れを辛そうにしていた人だった。


誰だろう…


わからない。


でも、


大人が嫌いだった翔太との別れを、


あんなに惜しむ大人の人なのだから、


きっと特別な人だとは思っていた。


翔太のお父さんは呆然としていた。


「…キミは、
翔太の友達?」


誰だかわからないその人が、


僕に尋ねた。


「…はい。


高校で、


一緒にハンドボールやってました。


今も、


同じチームでしたし、


高校のコーチも、


一緒に…」


「そうか…
キミか…」


「え…?」


まるで僕のことを知っているような口振りだった。


その人は深々と顔を下げ、


「ありがとう…。」


そう言った。


何がなんだかわからなくなった。


怒り?


悲しみ?


わかんない…。


でも、


僕は葛藤に襲われ、


その場から逃げ出した。

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