《MUMEI》

「桜──」




「‥ん」




「ちょっと教えて欲しいんだけど──」




「何だ?」




「仮名文字の書き方──教えてくれないかな──」

「ぁぁ、勿論。お前書けなかったのか?」




「うん‥読むのは慣れてるんだけど──書いた事はあんまりなくて」




「お安いご用だ」




 桜は筆を取り、すらすらと仮名を書き連ねる。





「ねぇ──」




「ん」




「具合──大丈夫‥?」




「ぁぁ、何ともない──」





「無理‥しないでね?」




 心配そうに囁く紫苑に、桜が苦笑する。




「ふふ、それは私の台詞ではないか」

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