《MUMEI》

  
あぁ…昨日、僕…レイプされたんだ……男なのに…。


「学校どうする」

学校…か…。

「…休みます…あなたのせいで身体痛い……それに…今日体育あるし」
「…じゃあ仕事行ってくるぞ」

そう言うと笹山さんはベッドで裸のまま横たわる僕を残し、部屋を出ていった。




昨日…レイプされたというのは分かるんだけど…内容はあんまり覚えてないや…。

でも、ベッドから起きあがろうにも、今までに無いくらい身体が重くて…。

シャワーを浴びている間も、何故か震えが止まらなかった。






「アキラ、どうした」

笹山さんが帰ってくると、キッチンで座り込んでチーズをかじっている僕を見て笑っていた。

「お腹減ってたし…冷蔵庫にお酒ぐらいしか入って無いじゃないですか…」

重い身体を引きづりなからシャワーに入り、持ってきた部屋着を着るとお腹が鳴ったんで何か食べ物を探したんだけど、その飲み物しか入ってない殺風景な冷蔵庫に一人暮らしってこんなモンなのかなと思った。


「外食ばかりだからな…食べに行くか?」
「…外に…出たくない…」
「そっか…ならピザでも取るか」

そう言うと笹山さんは電話を手に取ると、慣れた様子でデリバリーの電話を掛けていた。


デリバリーのこんな油っこいモノなんか食べるのも見るのも初めてだった…。

「嫌いか?」
「…うぅん……ぅι」

笹山さんが頼んでくれたピザを頬張ると、その噎せ返るような味の濃さに驚いたけど、やがてその味に慣れてくるとすぐに半分ほどペロリと平らげてしまった。

「腹減ってたのか?」
「…だって朝からあのチーズしか食べてないもん」

初めてのコーラを口にして、その甘くてピリピリする感触に驚きながら、でも初めての感覚に何だか楽しくなっていた。

「笑ったな」
「…何ですか」

そういえば朝から、無表情だったかな。

そりゃ…あんな事があったら…身体は緊張しっぱなしだったし、しばらく震えが止まらなくて…。


怖くて、苦しかった。
  

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