《MUMEI》 「んくっ///」 突然、笹山さんの指が僕の身体に触れてきた。 「痛いか…」 「…違います」 思い出しちゃうじゃないですか…。 笹山さんが触れた部分がじわりと熱くなってくる。 それは恋とか愛情からではなくて…何て言うんだろう…僕の中にはそれを言い表す言葉が見あたらない感情だった。 「アキラ…」 「その…名前で…呼ぶんですか…」 今まで親族にしか名前で呼ばれた事が無かったから、他の人に呼ばれると、ちょっと抵抗がある。 「千晶…でいいよ、俺の事も」 「ちあ…き…さん」 見た目とは裏腹に可愛い名前の千晶さんは、僕の肩に腕を廻してくると、そのまま僕の身体を抱き寄せてきて、僕も何の抵抗もなくその肩に寄りかかった。 「今日…学校、無断欠席だし…行き先言ってないから…今頃騒いでるかな」 「あぁ、それなら大丈夫だ、巽に連絡は取ってあるし親御さんにも話は付けてるよ」 「ぇっ…」 一瞬、全身の血の気が引いた。 「…ぁ…い…言ったんですか///」 「あぁ、キミの弟はウチで預かってるから心配しなくていいよ…ってね」 「ぁ…」 …そうだよね…まさか”こんな関係”の事、言うワケ無いもんね。 千晶さんは普通に外見も良くて、人からも信頼されるような見た目だった。 僕も、それでうっかり部屋に転がり込んでしまったぐらいだし…。 「学校にも欠席の連絡しておいたぞ、俺もあそこの卒業生だからな、事務員が変わってなくて驚いたよ」 「へぇ…」 そつがない千晶さんに外堀を全部埋められてしまった、という感じ。 「何か、不満があるのか?」 「不満…だらけですよ…」 コーラが喉をピリピリと刺激する。 「アキラ…」 唇を尖らせて千晶さんにそっぽを向いていると、千晶さんは強引に僕の肩を抱いてきて、僕はココに来てはじめてのキスをした。 前へ |次へ |
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