《MUMEI》
激痛
「今更なんで…」
男は体を洗いながら、先程見た夢を思い起こした。
夢…
いや違う。
それはただの俺の願望…
あれは確かに
幼い頃の自分の記憶。
夢に変えられないのなら
せめて……
忘れてたかった幼い頃の…
「うぅっ!!」
男の背中に、突然痛みが走りだした。
「い…痛ぇ!」
切り裂かれそうな激痛に耐えられず、声が漏れてしまう。
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ‥」
加奈子に聞こえない様、シャワーを勢いよく出して声を掻き消した。
やべぇ…
痛みの間隔がどんどん縮まってきている…
後、どれくらいだろうか…
満月まで‥
俺が人間でいられるまで…
後、何日あるのだろうか…
男はしゃがみ込んだまま、痛みが治まるまで少し熱めのシャワーを浴び続けていた。
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