《MUMEI》
生徒会長と新入生代表
入学式は、普通の在校生は参加しない。


(なのに何でこんな事に)


俺は、いつも以上に早起きし、学校に来ていた。


「あ、祐也、こっちこっち!」


入学式会場の体育館入口で、書記の真司が手を振っていた。


「今丁度打ち合わせ始まったところ」


真司と一緒に体育館に入ると、入学式前の会場の隅


司会のマイクスタンドの付近に集合している集団が見えた。


「おはようございます、田中君。すみません、呼び出して」

「おはようございます。…同い年だし、敬語はいいよ」


(俺、敬語苦手だし)


俺がそう言って笑うと


相手も


集団の中心人物である生徒会長の伊藤 絢香(いとう あやか)もつられて笑った。


俺と伊藤はクラスも違うから、まともに話すのは初めてで


俺は、正確には伊藤ではなく


選挙の時、伊藤の推薦者だった志貴に頼まれてここに来ていた。


「ヨロシクオ願イシマス」


真司の隣にいた、目鼻立ちのはっきりした、浅黒い肌の少年が、俺に頭を下げた。


〔うん、よろしく。はじめまして、サントス〕


新入生代表の彼はブラジル人で、カルロスの息子だった。

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