《MUMEI》

「…おい、かなたこっち来いよ」

そう言うと武がグッと俺の腕を引っ張ってギュッと手を握ってくれた。

あぁ…たぶん”空気読めよ”って事なんだろうな…俺アホだから分かんなかったよ…。

そういえば”そえん”って言ってた、コレって近くには居ないって事だよね。

兄弟なのに仲が悪いのか…世界でたったひとりの兄弟なのに…。

もし俺とはるちゃんが仲が悪くてずっと会わないままって事を考えたら…。

何だかこころがギュッと潰れるカンジがした。


「アキラ、境内の方へ行こうか」
「あ、はい…境内(けいだい)なんてよく知ってましたね」
「私は日本生まれだと言ったろう…」

アキラさんはそう言ってニコニコしながら兄ちゃの側まで駆け寄って行っていた。

よかった、俺が機嫌悪くさせちゃったかもって思ってったから…。

「じゃぁな、私達はココで」

そう言って克哉兄ちゃはアキラさんと嬉しそうに顔を見合わせると、一緒に神社の方に歩いてった。


「俺達はあっちの方行こうぜ、花火が上がるんだってさ」

武が川の向こう岸を指さして、花火がよく見えるって言う所に行こうと言ってきた。

「花火っ!行こ行こ♪はるちゃん♪」
「う…うん」

ちょっと俺達から離れていたはるちゃんの手をギュッと握ると、武について歩く。

「はるちゃん…アキラさんにやきもち?」
「何でだよ///…別に…」

赤ちゃんの頃からはるちゃんは克哉兄ちゃに片思いをしていた事は、いつもそばにいた俺には分かっていた。

いつも兄ちゃんについてって、じっと兄ちゃを見つめていたり、いっつも抱っこをせがんで甘えていたから。

克哉兄ちゃの事が好きなんだな、って思ってた。

だから俺の事が好きだって言ってくれたとき、嬉しかったけどすごくビックリした。

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