《MUMEI》
最後のわがまま
美紀を家に送り、


僕も自宅へと向かった。


雨は止み、


雲も少なくなり、


空には夕日が見えていた。


「…」


プロ…


もちろん簡単になれるものじゃないくらいわかってる。


ハンドボールの技術はもちろんとして、


その為にいくつものものを犠牲にしなくちゃならない。


日本ではハンドボールのプロリーグはない。


この国のプロとはつまり、


実業団のことを指す。


保険のきかないこの仕事を目指すことは、


不利なガタイの僕には大きなリスクを伴わせる。


それでも、


挑戦しなくちゃならない。


それは、


これまで自分の決めた道以外は歩こうとしなかった僕が、


他人の願いで初めて選んだ道だった。


最終的に決めたのは僕。


例え上手くいかなくてもそれを誰かのせいにすることはないだろう。


でも何故だか不思議と、


頭の中に浮かぶのは成功した僕の姿以外なく、


大きなリスクを伴っているというのにも関わらず、


それを実現させる自信が、


僕にはあった…。

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