《MUMEI》

「何で急に…」


「…急じゃない。」


「…?」


「僕も急だと思ってた…。


でも違う。


そこに踏み込む勇気がなかっただけ。


僕はいつも自分がやることに自信を持ってやってる。


それがいつも正しい選択とは限らないけど、


でも、


ここからは逃げたくない。


ここだけは引けない。


そう…


気付かされたから…」


「…」


父さんはタバコを吸った。


「…小さい頃から仕事であんまり構ってやれなかったな。」


「…」


父さんこそ…
急になんだよ…


「運動会も、


授業参観も、


…ハンドボールの試合も見に行けなかったな。」


「…」


「お前は頭の良い子だったからな…
それをわかってて俺にわがままを言おうとしなかった。」


「…」


「俺は…
どこかでその状況に甘えてた…。」


「…」


僕は黙って父さんの話を聞いた。


父さんは、


タバコを吸いながら時計を見た。


「11時20分か…」

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