《MUMEI》
その後の頼(頼視点)
祐也は入学式が終わる前に体育館前を去った。


(良かった)


本人は全く意識せずに帰って行ったのだが、俺は安心していた。


祐也は本当に自分の容姿を全く自覚していない。


身長はそれなりにあるが、華奢で色白で、艶やかな黒髪に、エイミーと同じ美しい青い瞳に


美しい、気品ある顔立ち。


日に日に表情豊かになる祐也の魅力は、留まる事を知らず


『吾妻の姫』は、新入生の誰もが憧れるマドンナ的ポジションなのだ。


(エイミーも心配だけど、祐也も心配だよな)


きっと演劇部には、二人目当ての部員がたくさん入るだろう。


(とりあえず、今はエイミー目当ての男、だな)


そして俺は、体育館から出てきて


「外国人の可愛い女の子」

「金髪青い瞳」


等々、エイミーを連想させる単語を発した男共の顔を端から記憶し、睨みつけていった。


(エイミーが九組で良かった)


今年の新入生は全部で九組で、退場は一組から始まり、九組で終わる。


「頼の事皆かっこいいって言ってた…」

(可愛い)


最後の方に出てきたエイミーに、俺は思わずキスをして


…エイミーの兄貴のアルフに殴られた。

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