《MUMEI》

『戦争で絶叫する人々が愛おしい。
死に際の断末魔にぞくぞくするんだ。
映画で満足出来た筈だった、木下が声を張るから、ふと叫ぶ姿を想像してしまった。それが始終俺をせき立ててくる、木下のせいだよ、俺は遂におかしくなったんだ。』

改めて、捕まったと認識した。


「……先生、安西は出して下さい。」


「いけません、絶対に離れませんからね。」

安西の腕が離れる気配はない。


『健気だな。俺はそういうものは求めていないんだけれど……木下は安西を逃がしたいかい?』


「はい。」


『木下が指示通りに上手く従うことが出来たらいいよ。』


「……はい。」


「駄目です!」


「大丈夫だから、安西。」

興奮する安西を宥めてから、先生の指示に従って開いた扉から出て行く。


「自分に言い聞かせているのかな。」

扉の鍵は手際よく槙島先生によって閉められた。
安西、すぐ出してやるからな。

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